いい空気感
ここ茅ヶ崎には、防災放送というモノがある。
アナログな施設で、よく学校の校舎に付いているメガホン型の屋外スピーカーが、二つ一組になって電信柱より背の高い柱に設置されているシロモノ。それが、海岸線はもとより、市内の主要箇所に立っているのである。
このアナログな放送機器から発せられる音声は、まず「こちらは、防災 茅ヶ崎です」というイントロではじまる。 それは、反響音を計算されていて、「こちらはー、 ぼうさい ちがさきです 」というようにしっかりと区切られて発声される(残念ながら、年配風の男声だが)。
その放送内容は、地震の後の津波の有無の放送とか、防災訓練実施のお知らせとかがほとんどだったけど。最近多くなったのが、ご老人の行方不明者の探索願い放送。
「○○ ××さん 86才 紺色のコートに 赤いニットの帽子で 午前中に 白い犬と 散歩に出たまま 帰ってきません 心当たりある方は 最寄りの警察まで 」 ・・・のような感じで。
この手の放送を耳にするたび感じるのは、行方不明になって心配している家族の方には申し訳ないけど、都会にはない のんびりした「いい空気感」なのである。
「こちらは 防災 茅ヶ崎です」というイントロが流れると、市内のどこにいても、聞き耳を立てる習慣がついたことを考えると、これは都会では成立しない、田舎独特の究極の伝達手段なのかもしれない。