裏メニュー

横浜中華街のとある店に、牡蠣やきそばという裏メニューが
あるという情報に、牡蠣好きのボクは、即反応した。

なんでも福建省の家庭料理で、中華街では珍しく
午前二時まで営業している事もあって、他店の料理人が
食べにきて評判になったというが、福建省からの牡蠣が
大量には入荷しないので、メニューには載せられないという。

福建省産の牡蠣は、小振りだが、濃厚な味が特徴らしい。
期待を胸に、中華街のその店の扉を開けた。

「いらっしゃいませー、こちらにどうぞー」
流暢な日本語だ。
「裏メニューの、牡蠣やきそば、ありますか?」
「はい、ありますよー」
「じゃあ、それと、生ビールお願いします」

生ビールを飲みながらメールをチェックしつつ、しばし待つ。

「おまちどーさまー」
テーブルに置かれた料理は、あきらかに冷やし中華だ。

「ちょっと、これなんですか?」
「冷やしちゅーかよー」
「ボクは、牡蠣やきそばをオーダーしたんだけど」
「え〜、冷やしちゅーかと思ったよー」
「いいえ、牡蠣のやきそば、ね。裏メニューの」

多分、彼女は、「夏季」限定メニューの冷やし中華
思い込んでしまったのだろう。
「あ〜あ、牡蠣ねー」
と一人納得して、しばらく時間がかかるが、待って
もらえるかとボクに尋ねた。

で、いよいよテーブルに登場した牡蠣やきそば。
えーーーっ、これも牡蠣やきそばじゃ、ないのでは?
と感じるほど、牡蠣が小さすぎて見えないのだった。

ま、確かに福建省の牡蠣は小さいとは聞いていたけど、
まさかここまで小さいとは思わなかった。人差し指の
爪の大きさ程度で、20個以上は入っていたが、なんせ
牡蠣の「食感」がない。牡蠣の味は確かに濃厚だけれども。

料金を支払う時、オーダーを取った女性が、
「お味は、どうだったですかー?」と聞いてきたので、
「期待が高かっただけに、やや期待はずれだった」と
正直に答えておいた。

オイスターソースやきそばみたいな感じなら、
そりゃ一年中楽しめるなあ〜。そんな一品だった。