ぐむむ

シューズの底が、思ったよりも固い。
新品のせいか、うまくしなってくれないので、
走りがぎこちない。

踵で着地して、足先で地面を蹴るまでの動作が、
スムーズに行かず、ぺったんぺったんな感触だ。
まあ、一週間くらいで走りやすくなるだろう。

夕方、名古屋の兄貴から連絡が入る。

アルツハイマーでありながら、手術する体力のない
動脈瘤のため、手足を固定されて昨年の正月から
入院中のオフクロが、脳溢血か脳梗塞を引き起こした
らしく、イビキをかいて眠ったまま意識がない状態に
なったという。

CT検査で部位と症状を特定する事も考えられるが、
ベッドから移動する際に、頭が揺れてそのまま逝く
恐れが高いのと、たとえ検査で部位が特定できても
延命の治療ができないのであれば、検査はしなくて
よいと医師に伝えた、と兄貴。

それでいいんじゃない、と弟。

オフクロの最後の体力と死との闘いの決着を、
病床の傍らで見届ける覚悟の兄貴に、
オヤジはたまたまオレが見届ける事になったので、
オフクロはよろしく頼む、と託す。