粘走5時間52分!その2 9月6日

昨晩22時半に消灯してからは、すぐ寝付けたようだが朝5時前に目が覚めた。6時間以上も通して寝れば十分すぎる。

窓から夜明け前の富士山の勇姿が素晴らしい。この時期は朝方しか富士山の全貌は見えないことが多いらしい(日中は雲で覆われてしまうから)。
こっそり部屋を抜け出し、バルコニーから富士を眺める。

そうか、東側に富士が位置しているので、日の出は富士山の稜線から現れるかもしれないな。まだ時間がありそうなので、今のうちにうんちを済ませておこう。

宿泊所から北方向の景色。これがこれから登る竜ケ岳なのか?
富士山から日の出が拝めた。う〜ん、やっぱり、いいなぁ、こういうの。

6時を過ぎたので部屋に戻り、みんなを起こして、食堂へ。卵焼きにサラダ、ブロッコリーと人参の湯がいたやつ、漬け物に、ご飯とみそ汁。丸美屋おかかふりかけも! ご飯だけお替わり。
さぁ、あとはレースウェアを着て、ゼッケン付けて、手荷物をまとめて〜じゃなくて、布団をたたんでシーツをまとめてリネン室に持っていって、洗面所をぞうきん掛けして、床とベッドの下に掃除機をかけて、スリッパ揃えて、チェックリストに記入して、8時半までに部屋を出る、と。
荷物を別棟の屋内スケート場(氷なし)に持ち込み、ゴール周辺に出ていたショップや無料テーピングサービスを冷やかしていたら、相馬選手家族を見つけた。2年前ハセツネで優勝した時と同じ黄色いアディゼロで走るんだ。
今回は残念ながら奥宮選手(2年前ハセツネ2位、今年のハセツネ30k優勝)が出場できなくなったので、二人の対決が見られない(どっちみち早すぎるので二人の走りは見られない)。

スタート30分前になったので、宿泊所から徒歩5分の芝生広場(朝霧アリーナ)に移動。東に富士山がまだ見える。

ほんとに気持ちのいいオープンスペース。この広さなら、スタート直後の混雑もないだろう。

スタートは、ロード10kmの自己申告タイムによって4つに分けられている。〜35分、〜40分、〜45分、45分以上。3分の2以上の人が45分以上のブロックに適当にばらけて集まった。スタートはゆっくり行きたいボクも当然このブロックに並ぶ。

今回のレースは、35kmのLSDのつもりで走ろう。一山の登り下りを除けば、ほとんどがクロカン並みの割と平坦なトレイルみたいなので、普通に走れば4時間半くらいで完走できるだろう。
途中エイドステーションが3カ所も設定されているので、背中のハイドロには500ml入れれば十分だろう。トレーニングも十分に積んできているし、秘密兵器をシューズに忍ばせているので、ハセツネ30Kの時のように足が痙攣するようなこともないだろうから、急な登り以外は決して歩かないこと。
実は、この読みがかなり甘かったことは、中盤以降解って痛い目に遭うことになる。(でも、出場者のブログを読むと、かなりのトレラン経験者でもほとんどの人が、ボク同様にこのコースは初心者向きと甘く見ていた=主催者も初心者でも走れると謳っていたので)
スタート前に招待選手の紹介があって、ハセツネ30Kの時とは全然違う和気あいあいののんびりした雰囲気。下はスタート直前の、10km45分以内で走る選手たち。スタート後、この広場を登り上がったところで右折してアスファルトの急勾配の道を宿泊施設まで駆け上がる。(フィニッシュもこの急勾配のアスファルト道を1kmも下から駆け上がるんだぜ〜がんばろっと、と思った)

野外活動センター内のキャンプ場に至る小径を通り、

一般道を少し走って、


139号線の下を抜ける牛道を通って、

のんびりした畑の道を走り抜けて、

東海自然歩道に出た辺りでチェックポイント(CP)1。今回はSIチップという装置を指に付け、各チェックポイントでステーションと呼ばれる百円玉くらいの穴に差し込むと、光と音が出て電気的な信号を記録する、オリエンテーリングで使用されている方式で、これにより各チェックポイント毎の通過時刻が記録される。
CP1はスタートから4.1km地点。完走してから渡される記録表によれば、25分22秒で通過しているので、キロ6分10秒くらいか。スタート直後はゆっくり行こうと決めていて、写真を撮りながらだから、こんなもんかな。

自然歩道の標札も所々にあるので、次の目的地まで何キロあるのかが解って走りやすい。ちなみに今回のコースは、赤と白のテープで印されていた。

自然歩道は、しばらく木陰のフラットなトレイルがあり、

徐々に登りも出始める

右手が草原の開けたルートに出ると、正面に本日の難関、竜ケ岳が見える。

背丈の高い植物の間を抜けたり、

木陰を走ったり、

揺れる吊り橋は、さすがに歩かないと。走ると落っこちそうになるほど揺れるのだ。

東海自然歩道のルート看板。

ハセツネ30Kでは「マムシに注意」だったけど、富士山麓じゃあ熊かよっ!

結構、走りやすいトレイルが続く

でも、むき出しの木の根には注意が必要

並走した人と、すっげえ気持ちいいですね〜と走りながら語り合ったりしちゃったほどの涼しいトレイル。うわぁ〜〜〜っと、大声を出したくなって困った(笑)

CP3は13.9km地点(CP2の写真がないのは、給水に夢中になっていたからか?)CP2からの4.6kmを39分56秒。そんなに登りのイメージがなかったけど、キロ8分40秒もかかったのは、やっぱり気持ちよく走り過ぎたから?

一旦ちょっと登るが、

基本的には本栖湖に向かって下るルートなのに、CP4までの2.8kmに21分51秒=キロ7分50秒は、どう考えてもかかり過ぎだと考えて思い出したけど、この辺で両足を痙攣させた人にFreedom(クエン酸+BCAA)を一袋渡して力づけたりしたからかな?

CP4からは竜ヶ岳の巻き道をぐんぐん登っていく

つづら折りを登る。他の人のはぁはぁ言う呼吸音が聞こえてくる。みんな連なって、無言で登る。ここは歩きだった。

途中、北側が開けて、本栖湖が見えた。ちょっと神秘的に見えた。

今度は南東側に眺望が開け、今朝スタートしてきた野外活動センターを探すが、わからず。

あれを登れば頂上だろうと、すこし小走りになったけど、

その小屋は、まだまだ中腹の小屋だった。そこで大胆にも座って休んでいる選手もいた。

その小屋の屋根が、写真の真ん中あたりに小さく見えるほど、ずんずん更に登っていき、

小さくなった本栖湖も、ここまで登ってくれば、今やなつかしい(笑)

ここにパンダがいれば大喜びするだろうな、というほどの笹の中をひたすら進む。

垂直に500m登ることが、こんなに大変だったなんて。今までの登りの苦労を小馬鹿にしたような、ちんけな頂上にがっかり。
竜ヶ岳の頂上は、一応CP5。CP4からのたったの3.2kmの登りに1時間6分22秒もかかってら〜。これは話にならんほど遅いんだろうな、多分。他の人の平均ラップが知りたいものだ。

ここから尾根沿いに結構急斜面を下っていく。下りの方が得意なので、前を走る人に追いつくが、声をかけて抜かすほどは早くないので、しっかり付いていくことにした。
斜面は濡れていて滑りやすい泥上の赤土。一瞬、岩に左足つま先を当ててバランスを崩した。これまでだったら反対の右足を素早く前に出して、スピードを上げることによりバランスを取り戻すんだけど、今はすぐ前に人がいるので、反対の足の踵をだして踏ん張ろうとしたら、ズルッと大きくスリップ。右の尻から尻餅ついて1mくらいずり落ちてしまった。
あ〜、トレイルで初転倒(尻餅は転倒じゃないか?)しちゃったよ〜。CW−Xと、地面についた右手はドロドロだ〜。
ちょっとテンションが下がったけど、しばらく行くと岩場に水たまりを発見。手とハンドタオルを洗って、顔と頭を拭いて、一息つく。後続の人も水たまりで手を洗い出したので、いやあ、転んじゃったんですよね〜と言葉を交わして、その岩場を躊躇なく下へ降りていったのだった。降りにくい岩場だな〜と30mくらい降りたところで、上にいた後続の人が、「コース違いますよ〜」と叫んでくれた。え〜、その声が聞こえなかったらここでロストコースして行方不明になったかも知れない。いかんいかん、冷静にならなくちゃ。でも、ボクが下に降りていくのを30mも見ていたなんて。。。もう少し早めに声かけてくれればよかったのに〜(笑)
急いで登っている途中に、右太腿の内側が痙攣した。え〜、ハムストリングじゃなくって前部の内側なんて、初めての経験だ。コースに戻ったとき、左側の同じ箇所も痙攣!
屈伸もできず、ただ立ち尽くす。 竜ヶ岳の頂上に向かう途中でFreedom(パワージェルも)を服用していたのに、なんで痙攣? 転んだせいか? と自問自答していてもしょうがない。残りのFreedomは他人にあげちゃったし、あ、塩飴が一つ残っていたので、それを口にして、ゆっくり屈伸して降り始めてみた。
おお、下りだと痙攣箇所がなんともなかったので、一安心。とりあえず降り切ったチェックポイントまでがんばろうと。
この下りで、胸に巻いた心拍計のベルトが腹の方までずり落ちてきた。ずり落ちると、心拍計が180以上の異常値を示すこともわかった。(最初はびっくりしたけど)ずり落ちる度に、ベルトを胸までつり上げる作業は、繰り返すうちにかなりのフラストレーションになってきた。
今考えれば、少し立ち止まってベルトをもう少しキツくすれば対応できたことだったのに。そんなこと考えたこともなく、ただただシャツの上からベルトを上に上げる作業を繰り返ししていたのだった。
それにしても、泥土あり、ゴロ岩あり、不規則な木の階段ありの、急斜面は、ほんとにスピードが出せない厄介な下りだった。ようやく、平地のCP6(CP2と同じ場所)が見えた。下りの2.8kmに40分もかかっちゃあ、トレイルランナーが泣くというものだ。しかし、この下りの写真が一枚もないのは、よほど気分に余裕がなかったからに違いない。面目ない。

ここで、アンパン4分の1切れとバナナ4分の1切れを口にした。給水はスポーツ飲料2杯と水1杯をいただいた。このレースの給水所では、普通の紙コップより一回り小さいサイズを使用しており、2杯以上飲む時は同じ紙コップを使わねばならないルールになっている。(飲めるのは一人3杯まで)
他の大会に比べ(ハセツネ30Kはエイドステーション自体なかったので別格だが)、エコな感じが心地よい。
ちなみに、ツールドモンブランでは、マイコップを携帯して走り回らないと、エイドステーションで給水できないらしい。どうせやるなら、ここまでやらないとね。

平地を走る分にも、内股の筋肉は大丈夫だったので、安心して走り出した。空を見上げると、気持ち良さそうなパラグライダー軍団が! 「お〜地上では苦しそうに走ってるやつがいるぞ〜」とか言われているのかなぁ、と彼らの写真を撮ってみた。
CP7(=CP1と同じ)までの5.1kmを42分44秒で走る。キロ8分半なんて早足より遅いくらいだが、最初に立てた目標を守り抜き、ペースは落としても最後まで歩かないで走る。(CP7の写真なし)

麓の扇状地にある草原の牧場を突っ切るコース。草が足にまとわりついて、以外に走りにくいので、先達が踏みしめていった細い道を踏み外せない。

草原の先にCP8(29km地点で最後の給水所)。

今一度、東海自然歩道に戻って、麓の吊り橋を渡って、

涸れ河1.5kmを登る。溶岩でできたゴロ岩が不安定で、ぐらぐらしているため、一気に登れない。登り時の太腿内側の不安とともに、ここまできて捻挫なんかしたらどうしようもないので、慎重にならざるを得ない。カラダが疲れている最後に、こんなルートを入れることは、ボクは反対だな。
どんどん、前の人との差が広がっていく。あ〜、こんなルートは、トレイルランニングじゃないやいっ! と周囲に誰もいないのをいいことに、悪態をつきたくなって困った(笑)

天井の低いトンネルを抜けて、

地上に出ると、ゴールまであと1km地点だが、急勾配の登り道の途中だった。

急勾配だけに大股で歩いた方が早いかも知れないけど、歩幅を小さくしてジョグで登る。朝霧ヴィーナスガーデンゴルフコースの看板が眩しかった。

背中のハイドレーションの500mlも、涸れ河で飲み尽くしていたので、坂の途中でボランティアな若い男女二人が、臨時給水所を設けてくれていたのがありがたかった! こんなところで若い女性が水の入ったコップを持ってボクのそばまで走り寄ってきて、「あと、もう少しですっ、がんばってくださいっ!」とエールを送ってくれた日にゃ、アナタ、走る活力が湧いてくるのでした。ほんとに感激しちゃいました。ありがとう!

ようやく道の彼方に野外活動センターが見えてきた。前を走るランナーはいない。振り返っても後続のランナーは見えない。
じゃあ、マイペースでゴールしよう。ゴールしたら、コースを振り返って、ありがとうの御礼とお辞儀をしよう。
そうだ、ゴールのステーションにSIチップの指を入れる時の写真を撮ろう、などと思いながら走っていたが。

ゴール前に広がる芝生に足を一歩踏み入れた瞬間、また例によってスピード出して走ってゴールしてしまい、直前に考えていたことは、ほとんどできなかった(笑)

総合優勝は相馬選手で、記録は3時間00分07秒。さすが、めちゃくちゃ早い。女子優勝は鈴木博子選手で、4時間15分40秒。
ボクの正式タイムは、5時間52分16秒。ロング(34.7km)男子56才以上の部で、エントリー26人中 完走13人のうち10位だった。
ブログでチェックしたら、女性サブフォーランナーがボクより2分遅れでゴール。女性サブ3.5ランナーがCP4でボクより遅い経過タイムで棄権していた。これからすると、ボクの記録もあまり悲観する必要はないかもしれない、と少し安心した。

ゴールしてすぐに自分のラップデータを渡され、荷物の置いてある場所まで行って着替えると。足の指が火山灰?で真っ黒になっていることに驚いた。カスケディアの表面はメッシュ風になっているので、そこから細かな粒子が入り込み、靴下も通過して足の指についたのだ。
今回、カスケディアに入れた秘密兵器のSUPERfeetのおかげで、膝から下にはなんの異常もなかったが、これだけバリエーションのある地面を走るためには、カスケディアよりももう少しタフなトレランシューズを選んだ方がいいだろうな。(つま先を岩にぶつけて痛い目にあったこと3度)

このあと地元茅ヶ崎で参加しなければならないイベントがあったので、シャワーも浴びずに朝霧をあとにしたが、富士宮から東名に乗るまでに渋滞で、ようやく東名に乗ったら事故渋滞で最悪な混み具合。約6時間自分の足で走ったあと、5時間かけてクルマを運転して茅ヶ崎に戻ったのだった。 あ〜、疲れた。
でもでも、朝霧高原トレイルランニングレースは総合的に楽しかったし、いい経験になった。関係者の皆様、お世話になりありがとうございました。特に若いボランティアの方々、今後もどうかその意気で活動を続けられることを願わずにいられません。
最後まで読んでくれた皆様も、お疲れさまでした。

本日の走行33.6km(GPSによる) 月間走行距離=54.2km。